「サマーバケーションEP」という大好きな小説がある。
あらすじは、人の顔を覚えられない障害を持った20歳の男子が、初めて1人外出を許され、井之頭公園で出会ったウナさん、カネコさんと川を下って海を目指すというもの。
歩いている途中、おじさん社長や国際的カップルが仲間になったり、不良の喧嘩に巻き込まれたり、大衆浴場で泊まったり、仲間と別れたり、いろいろな経験をする。
その小説にあこがれ、過去に、泉州で川を下って海まで歩いたり、線路の沿いを歩いたりと、たどる系の散歩を経験している。
でも、もっと長距離を歩く散歩をしたいという心残りがずっとあった。
マジで欲を言えば、京都の山奥の源流から下って鴨川→嵐山から流れる桂川と合流→大阪の淀川→大阪湾、と泊まり込みの3日くらいかけて源流から海を歩きたかった。
けど社会人となった今、現実的ではないので、鴨川から流れる淀川から2分岐した川、「大川」からスタートして、大阪湾を歩いて目指すことにした。
「サマーバケーションEP」では、東へ歩くと東京湾に出るけど、大阪では、西に歩くと大阪湾に出る。
この日はいい天気だったので、若い家族であふれる大阪城公園を抜け、大川にたどり着く。

大阪城の北側を、東から西へ流れる大川。
分岐してきたとはいえ、この時点で相当幅広な川。
14時8分。
頑張って海を目指す。
どんどん西へ歩いていると、観光客を乗せたクルーズが通っていく…。
川目線で見る大阪も面白そう。
川、くそ汚いけど。

分岐点。
このまままっすぐ西に向かえば「土佐堀川」という名前になり、中の島美術館や大阪市立科学館などがある知的な街につく。
でも今回は、せっかくだし大阪の象徴であるグリコを写真に収めるため、知的のちの字もない道頓堀につながる左の川を選んで歩いていく。
方向としては南側を歩いていることになり、遊歩道も一応あるけどすごい汚いっていう…。
道自体は舗装されているけど、葉っぱも剪定されておらず、カラスもポイ捨てもちらほら見られ、夜とかお化けが出そうな、そんな薄暗い道。
そしてそんな遊歩道もなくなり、川は真上に高速道路が通る高架下を流れていく。
川沿いを歩けなくなったため、川を左手にあることを想像しながら、普通の道路をそのまま南へ歩く。
途中おなかがすいて、個人店のハンバーガー屋さんに入る。
肉に力を入れている店らしく、肉肉しいメニューしかなくて重いかと思ったけど、トマト系のソースが程よく甘くて、めちゃくちゃおいしかった!
この時点で1万歩歩いていた。
その後も川沿いを歩けないので、普通の道路をどんどん南下する。
歩いている道は、低層ビルが死んでるというか、20年くらい前にしめただろという低層ビルや店が立ち並んでいた。
観光客が来るところではなく、昔栄えていたであろう街。
人がそんなに多くない割りに、ポイ捨てとかゴミ捨てが目立って汚い印象だった。

南へ歩ききり、川が西へ直角に曲がっている。
ここから高架下ではなくなる。
しばらく西を歩いていくと、川越しに道頓堀にあるドンキの黄色い観覧車が見えてきて、「うわあああああ難波キタアア!!」とめちゃくちゃうれしくなる!
相合橋の下を歩き、戎橋の下を歩き、ついに観光客がめちゃくちゃ多くなる場所までたどり着いた…!
一般の観光客はもちろん、なんかのイベントなのかコスプレしてる人が本っ当に多くて、これまでの速さで歩けないくらいこみこみだった。
グリ下では遊歩道の幅が広いにもかかわらず、若者が団体で座っていたため、人ひとり通れる幅を、両通で来る人が譲り合いながら通るという状態になっていた。
…いやいやいやアンタらココ通る人の気持ちを考えろよ?と。
大阪城から道頓堀まで歩いて足ががくがくになっている30代女の気持ちを考えろよ?と。

グリコ看板到着!
こんなに感慨深くグリコ看板を拝んだことがかつてあっただろうか…!
この時点で15時45分。
その後も歩いていくと、徐々に観光客は減っていき、コスプレしているかわいい女子と本格的な機材をセットしているカメラ男性、という2個1の組み合わせが目立ってきた。
それぞれ撮影のセットにすごい場所をとっていたけど、ちゃんと歩く人の邪魔にならないところで撮影をしていたので、歩くのにストレスがなく、マナーが良かった。
コミケとかいったことないので、オタク文化にちょっと触れられて面白かった。
オタクたちが減っていっても、どんどん西へ歩き進める。
水分補給が大事なのはもちろんわかっているけど、それと同じくらい大事なのが、トイレ問題…。
トイレに行きたいがために、コーヒー屋さんに入る…。
水分を出して、水分を入れるっていう矛盾行動…。

また分岐点。
ここは、道路でいう交差点。
これまで歩いてきた道頓堀川と北側からの木津川が合流し、南に流れる木津川と西に流れる尻無川に分かれていく。
正直、川なんてどこをたどっても最終的に大阪湾に着くけど、せっかくだから海遊館を写真に収めたいので、西に流れる尻無川を選ぶ。
写真でいう正面に流れている川に沿って歩いて行った。
本当に我ながらあほだけど、この日スマホの充電を40%くらいで出て行って、この時点で充電20%だった。
海に向かって川沿いを歩いているし、今南海地震来たら終わるな、とか思いながら歩いていた。
しばらく歩くと、いよいよ海に近づくからか一般住宅がなくなり、工場や大きな倉庫が立ち並ぶ風景になってきて、マジで人けがなくなっていって怖くなってきた。
夕方特有の不気味な雰囲気も相まって、ビビり散らかしながらも、とにかく海に近づくため、西へ西へ歩を進める。
で、このまま歩いたら海だけど、もうこれ以上一般人が入れなさそうかなと思うくらいまで進んだところで、海遊館へ行くためにいったん普通の道を歩くことに…。
一般道を歩いていると、乗用車が走り、学校がたっており、一安心する。
が、外国人労働者や、沖縄人顔の主婦たちがしゃべっており、「え?本当にここ大阪?」と怖くなり、周りの看板を見てちゃんと読める日本語だったのでほっとする。
パラレルワールドじゃなかった、みたいな…!
マジでそれくらい怖かった…。
あとなんか、高校生の時のこと思い出した。
自転車で帰宅中、突然強めの雨が降り出して、まだあと20分くらい漕がないといけないから雨に負けるまいと必死に坂道を上ってた時のこと。
寒いししんどいしちゃんと帰れるか不安だけど、前に進むしかないから何とか進んでいたあの時の感覚。
17時51分。
やばいくらい足ががくがくになっている中、マンションとマンションの間からのぞく、大観覧車を見つける…!
大観覧車は、海遊館の真横にたっている。
本当に自分の足だけで海遊館まで歩けたんやという謎の感動に包まれながら、あともう少し、と頑張って気力を出して、一歩一歩足を出していく。
そして18時5分…!

海遊館到着ーーーー!
本当に感動した…!
もうほんとに…、感動した…。
歩いてよかった…。
そして海遊館の裏へ回る…。

海…!!
海、大阪湾…!
対に到着したな、と…!
もうマジで感動。
ぶっちゃけ「サマーバケーションEP」みたいに面白い出会いがあったわけじゃないし、自分と向き合って成長したとかでもないけど、でも、でも歩いてよかった…。
いろんなこと含めてとても楽しかった。
スマホも何とか7%を保ったまま、旅を終えることができた。
本当にやり切ったし、いろいろ想いにふけながら、電車で自宅に帰るために海遊館の最寄りの南港駅に行く。
ホームで椅子に座って待っていると、いきなり屋根が揺れてガタガタガタガタと大きい音を立て、電光掲示板とその隣のライトが激しく揺れだす…。
地震だ…!
私と周りの人含めたスマホの警報が鳴りだし、すぐさま立って椅子の背をつかんだ…!
電光掲示板が落ちた高槻市の地震をとっさに頭に浮かべ、この後津波来たら海すぎて死ぬ!と充電7%のスマホはさすがに触れず不安に襲われた。
結果的に南港は震度3だったし、そのあと大きい余震とかもなかったけど、充電はちゃんとしないといけないと反省した。
そんなこんなで、川沿いを歩く1日、とても充実していたし楽しかった。
この日の合計歩数は、29836歩だった。
〇「成るがままに騒ぐままに トラブルすらも燃料さ 波風立たない人生は ちょっとばっかりつまらない お気楽に極楽に 今日もばかしていこう」(歌詞)成るがまま騒ぐまま/milktub